代表番号

0467-46-1717電話

救急は24時間365日受付

当院での治療方針〜膵臓がん〜

はじめに

当院では患者さんそれぞれの病状にあわせて消化器内科・外科・放射線科・病理部・オンコロジーセンターの医師が協力して、最も適切と思われる治療を選択しています。膵がんの治療は日本膵臓学会より 「膵癌診療ガイドライン2013年版」(金原出版)が出版されており、 当院の治療も基本的にこのガイドラインに則り、治療を行っております。

切除可能膵がんの治療

膵がんは発症初期には症状が乏しいため、早期発見されることが非常に少ないがんの一つです。そのため、発見されたときにはかなり進行していることが多いとされますが、遠隔転移(離れた臓器への転移)のない状態(ステージIVaまで)に発見された場合に対しては、ガイドラインに従い可能な限り手術を行うこととしています。手術の方法は、がんのある場所により、膵頭十二指腸切除術、膵体尾部切除術、膵全摘出術などとなります。手術の詳しい方法や入院期間などにつきましては担当医にお尋ねください。
術後には再発予防のために抗がん剤治療を行います。テガフール・ギメラシル・オテラシルカリウム(商品名:TS-1)を半年間投与することで、再発および生存が改善することが日本からの研究で証明されており第一選択としていますが、ゲムシタビン(商品名:ジェムザール)を用いることで予後改善が可能との報告もあり、TS-1が使い辛い状態の場合は、ゲムシタビンを用いることがあります。

s-1療法
GEM療法

切除不能(手術できない)膵がんの症状に対する治療

遠隔転移のある状態、また上腸間膜動脈・腹腔動脈などの主要な血管に強く浸潤している場合は、ガイドライン上手術は行わないほうが良いとされていますが、膵がんは発見されたときには手術ができないことも少なくありません。その場合、ガイドラインに準じた一般的な治療法は、抗がん剤治療または放射線治療になります。膵がんはいずれの治療においても単独での完治は難しいとされますが、延命効果や症状緩和効果は報告されており、保険治療として行うことができます。また、当初手術が困難であった方においても、抗がん剤、放射線治療後に手術が可能となり、長期生存可能であった例も報告されております。当院においても、可能性のある方は常に手術による根本的な治療を念頭におきながら、抗がん剤・放射線治療を行っております。

抗がん剤治療について

手術のできない進行膵臓癌で遠隔転移のある場合には、ガイドラインでは抗がん剤が推奨されています。治療薬剤の投与については、以下のような方法があります。膵がんにおける抗がん剤治療は、原則として効果があって副作用が許容範囲内の間は続けることが良いと考えられています。

1.FOLFIRINOX療法

フルオロウラシル、オキサリプラチン、イリノテカン、レボホリナートカルシウムの4種類の薬剤を組み合わせて行う治療です。従来の代表的治療であったゲムシタビン(商品名:ジェムザール)に対して、生存期間の延長が証明されており、現在の代表的な治療方法のひとつとなっています。しかしながら、ゲムシタビンに比較して副作用が多いことも報告されており、骨髄抑制(下記)や吐き気などの消化器症状、しびれなどの末梢神経症状や脱毛などは高頻度にみられます。

FOLFIRINOX療法

2.ゲムシタビン・ナブパクリタキセル併用療法

従来第一選択で使われていたゲムシタビンにナブパクリタキセル(商品名:アブラキサン®)を併用することにより、生存期間が延長されることが報告されました。そのため、FOLFIRINOXと同様に、現在の代表的な治療方法のひとつとなっています。しかしながら、骨髄抑制や末梢神経障害、脱毛などはゲムシタビンに比べて多いことが報告されています。一方で骨髄抑制によって生じる発熱性好中球減少症や、消化器症状の副作用はFOLFIRINOXよりも少ないとする報告もあります。 FOLFIRINOXとゲムシタビン・ナブパクリタキセル併用療法との効果の比較を行った報告は現在のところありませんので、全身状態や背景などによって選択することになります。

GEM+nab-PAC療法

3.ゲムシタビン(商品名:ジェムザール)単独療法

ゲムシタビン単独療法は、それ以前に使用されていたフルオロウラシルに比較して生存期間の延長が得られたことから、長い間膵がんの標準療法として第一選択薬として使用されていました。近年、前述のようにゲムシタビン単独療法より生存期間の延長効果が高い抗がん剤の組み合わせが報告されていますが、副作用も比較的少ないため現在でも重要な治療の選択肢の一つとなっています。

GEM療法

4.ゲムシタビン・エルロチニブ併用療法

従来第一選択で使われていたゲムシタビンに分子標的薬であるエルロチニブ(商品名:タルセバ)を併用することで、ゲムシタビン単独療法に比べてわずかに生存期間が延びることが報告されています。間質性肺炎などの副作用発現率が高く、期待される生存期間延長効果もFOLFIRINOXやゲムシタビン・ナブパクリタクセルに比較して高くないため、現在一般的には第一選択とはなっていません。

GEM+エルロチニブ療法

5.テガフール・ギメラシル・オテラシルカリウム (TS-1)単独療法

ゲムシタビン単独療法と同等の延命効果を有することが報告されています。副作用もジェムザール単独療法と同様に比較的少なく、内服薬のため治療も行いやすくなっていますので、現在も重要な選択肢の一つです。副作用として消化器症状が強く出る場合がある他、腎機能障害がある場合使用できないなどの制限もあります。

S-1療法

薬物療法の副作用について

抗がん剤には上記の代表的な副作用の他、それぞれの薬剤に特徴的なさまざまな副作用が生じますので、体調の不調があれば担当医とご相談ください。

骨髄抑制
血液の成分を作る骨髄がダメージを受けるため 白血球減少・赤血球減少(貧血)・血小板減少が見られます。これらにより抵抗力が低下し感染しやすくなったりすることがあります。骨髄抑制が生じた場合でも抗がん剤の休薬でほとんどの場合改善しますが、状況によっては白血球を増やす薬の注射や、輸血が必要になります。
嘔気・嘔吐
治療中に吐き気が出る場合には、事前の制吐剤使用や、抗がん剤の用量を減らすなどを行い、予防に努めます。
粘膜炎
内炎の他、結膜炎や下痢などの症状がでることがあります。 塗り薬やうがい薬などで対処しますが、 食事がとれないほどひどくなるときには抗がん剤を休薬したり、 減量したりすることで対処します。
間質性肺炎
特にゲムシタビンの関連する抗がん剤の組み合わせでは薬剤性の肺炎が生じることがあります。咳などの症状があれば担当医にお知らせください。
脱毛
特にFOLFIRINOXならびにゲムシタビン+アブラキサン併用で起こりやすくなっています。ウイッグなどが必要な方はオンコロジーセンターまでお問合せください。
しびれ
FOLFIRINOXならびにゲムシタビン+アブラキサン併用で起こりやすくなっています。ひどい場合は減量ならびに休薬を検討します。症状が完成すると改善しにくいため、お早めに担当医にご相談ください。
その他
抗がん剤には上記の代表的な副作用の他、それぞれの薬剤に特徴的なさまざまな副作用が生じますので、体調の不調があれば担当医とご相談ください。

放射線治療について

手術のできない進行膵臓がんで遠隔転移のない場合には、抗がん剤治療と放射線治療を併用して行うことも有効とされます。当院ではトモセラピーという最新の放射線治療装置を用いて治療を行っております。併用薬剤は基本的には副作用の報告の少ないTS-1併用療法を行っていますが、ゲムシタビンとの併用も報告されており可能です。また、転移性病変(骨、リンパ節など)による神経症状、疼痛に対しても放射線治療を行ない症状緩和に努めています。

トモセラピーの性能などの詳細については放射線腫瘍科のホームページをご参照ください。

切除不能(手術ができない)膵がんの症状に対する治療

膵がんが大きくなってくると、胆管を圧迫して黄疸(目や皮膚が黄色くなってくる)を引き起こしたり、腸管を圧迫して食べ物の通過障害を来たしたりすることがあります。 このような場合には、症状を改善するために従来は手術を行っていましたが、近年は内視鏡の進歩に伴い、口からカメラを挿入し、ステント(狭くなった管腔を広げる医療用の管)を胆管ならびに十二指腸などに留置することで、お腹を切らずに治療することができるようになりました。これにより回復期間が短くなったため、抗がん剤などの治療を早期に開始・再開することができます。当院では、先進的な方法も含めて幅広い内視鏡治療を行っており、ほとんどの患者さんに対してお腹をきらずに症状をとることができますが、困難な場合には外科にて手術(バイパス手術など)をうけることも可能です。また、膵癌に伴う疼痛に対しては麻薬性鎮痛薬を含めて複数の薬剤があり、疼痛コントロールは多くの場合薬剤のみで可能です。しかしながら薬剤でコントロール困難な難治性の疼痛が生じることもあり、その場合は内視鏡またはCTで観察しながら体内に針を刺して、腹部の知覚を司る腹腔神経叢または内臓神経にエタノールを注入する「神経ブロック」も行なっております。

医療費の問題

新しい抗がん剤が世の中に出てくることで、絶望の淵にたたされた患者さんにも希望の光が見えてきました。 その一方で、新しく出てきた抗がん剤は効果も高いのですが値段も高いため、経済的な心配を抱える方も多くなってきています。当院では経済的な心配を軽減するために、専属の事務担当者が、できる限りの社会資源を利用して治療が継続できるようにお手伝いをしています。高額療養費の制度につきましてはオンコロジーセンターまでお問い合わせください。

(2016年6月更新・文責 小泉一也)
PAGE TOP

© Shonan Kamakura General Hospital.

職員の方へ